News Release

2024-11-21

  • 共創・協働

ネパールの深刻な廃棄物問題と雇用不安定という課題の解決に向け、Idea Studio Nepalと石坂産業が「廃棄物再資源化プラント建設」に向けたMOUを締結しました。

ネパールに拠点を置き、社会課題を解決する起業家を支援するIdea Studio Nepal(拠点:ネパール・カトマンズ市、会長兼最高経営責任者:チェリン・ラマ、以下 ISN)と石坂産業株式会社(本社:埼玉県三芳町、代表取締役:石坂 典子、以下 石坂産業)は、「廃棄物再資源化プラント」をカトマンズ市内に建設することを目指し、2024年4月、MOUを締結しました。

MOUに合意し、署名を終えたDr. チェリン・ラマ(左)と石坂産業 遠藤由美子(右)(執行役員 HR統括推進部 部長兼海外/人財領域新事業プロジェクトマネージャー) 


このプラントは、石坂産業がビジョン「Zero Waste Design」、ごみをごみにしない社会の実現に向け、初の海外展開に挑戦するもので、「石坂モデル:Zero Waste Design 廃棄物再資源化プラント」として建設を目指します。両者は、2025年、合弁会社の設立も計画しており、ネパール国内での産学官連携を図りつつ、現在ビジネスの可能性を探る様々な調査を進めています。

今回のMOU締結の背景としては、ネパールの人口増加や貧困問題を要因とした深刻な廃棄物問題と雇用不安定という課題があります。ネパールの総人口は約2,916万人(※1)、カトマンズ首都圏(カトマンズ、ラリトプル〈旧称パタン〉、バクタプルの各市部を含む)は、約302.5万人(※2)もの人口を有する大都市ですが、埋立処分場はなく、街中のいたるところに不法投棄された廃棄物が散乱しているのが現状です。カトマンズ首都圏外にある2005年に建設されたシスドル埋立処分場の廃棄物の排出量は20.2万トン(2021年)で、2005年の建設時12.2万トンから約65%増加。加え、同所のメタンガス排出量は2021年に約2.2千トンと、毎年増加しており、早急な廃棄物管理が求められています(※3)。

カトマンズ市近郊に散乱する不法投棄された廃棄物 (2024年6月16日 撮影)

こうした状況下、両者は廃棄物管理システムの開発やプラント建設・運営にかかわる契約を締結し、カトマンズ廃棄物管理システムの一環として行政と民間の連携を行うPPP(Public Private Partnership)事業(※4)の推進に取り組んでまいります。

また、ISNと石坂産業のパートナーシップは、廃棄物処理・管理のプロセスにおける新規雇用の創出にも期待が高まります。特に若手人材の不足が深刻化する日本と、雇用不安定という課題を抱えるネパールの両国の課題解決に、高度技術人材の育成をする専門家交流プログラムEEP(Experts Exchange Program)(※5)の実施を始めとした相互連携を図っていきます。

ますば、ネパールの若手人材を対象とした同国の教育機関と連携を図り、トリブバン大学(※6)などで機械工学、土木工学等を学んだ6名の高度技術人材が来年5月に石坂産業へ入社。再資源化プラントで技術を学びながら働く予定です。将来的には、石坂産業にて、もしくは帰国後に「石坂モデル:Zero Waste Design 廃棄物再資源化プラント」で指導者やリーダーとして力を発揮いただくことを想定しています。

これまで特に建設系の廃棄物で業界トップクラスの減量化・再資源化率を達成してきた石坂産業が、地元の有力なパートナーや、母国ネパールの美しい自然を愛する地域の皆さんとともに、ネパール国内のごみの分別意識やリサイクル技術の向上に取り組むことで、資源循環や地域経済循環の加速や温室効果ガスの削減はもとより、新規雇用創出、環境教育の促進、高度技術人財の育成など、世界が抱える社会問題・環境課題の解決に貢献・挑戦を続けていく所存です。


【Idea Studio Nepal】
ネパール・カトマンズ市に拠点を構え、意欲的な起業家に対し、仕事や学習、ビジネスアイデアへの投資機会の場を提供しているNPO団体。コンセプト立ち上げからベンチャー立ち上げまでを支援し、社会的イノベーションを促進することをコアバリューとして掲げる。ネパールの政府、学界、公共・民間部門等、その他多くの機関と緊密なパートナーシップを結んでおり、互いにマルチステークホルダー・アプローチの原則に基づいて協力することで、活気ある起業エコシステムを構築するための環境を整えている。
https://ideastudio.org.np/
 
【Dr. チェリン・ラマ】
英国・ノーサンブリア大学を卒業し、健康開発学の理学士号、公衆衛生の修士号、遠隔医療の博士号を取得。Idea Studio Nepal(ISN)の共同設立者であり、若者の生活を変える革新的な方法を見つけることを強く信じる彼は社会問題に取り組む起業家を支援している。また、リーダーシップ研修・開発会社Leadx Nepalを率い、公的機関や民間機関へのガバナンスや開発に関する助言も行っている。世界経済フォーラムからヤング・グローバル・リーダーに認定され、公衆衛生と教育への貢献で数々の賞を受賞している。


 
※1)National Statistic Office, National Population and Housing Census 2021 (National Report), (Nepal, 2021), p.1
ネパール国家統計局公表「全国人口・住宅土地調査」(ナショナルレポート)(2021年公表)、p.1(英語資料)

※2)National Statistic Office, National Population and Housing Census 2021 (National Report), (Nepal, 2021), p.59 Table 14
ネパール国家統計局公表「全国人口・住宅土地調査」(ナショナルレポート)(2021年公表)、p.59 表14(英語資料)
https://censusnepal.cbs.gov.np/results/files/result-folder/National%20Report_English.pdf
 
※3)Proceedings of 10th IOE Graduate Conference, Estimating Methane Gas Generation from Landfill Site - A Case Study of Sisdol Landfill Site, Nuwakot Nepal, (Nepal, Tribhuvan University, 2021, October), pp.643-644, Table 5, 6
トリブバン大学公表「埋立処分場からのメタンガス排出量の推定 -ネパール・ヌワコット郡のシスドル埋立処分場の調査」(2021年10月)(英語資料)
https://conference.ioe.edu.np/ioegc10/papers/ioegc-10-082-10113.pdf

※4)The World Bank, PPP Laws/Concessions Laws – Nepal, The Public-Private Partnership Resource Center
世界銀行、ネパールのPPP法/コンセッション法、官民パートナーシップ・リソースセンター(英語資料)
https://ppp.worldbank.org/public-private-partnership/legislation-regulation/laws/ppp-and-concession-laws
※PPP:主に行政が行う公共のインフラやサービスの開発や運営を民間企業が連携することで、より効率的かつ質の高いものにしていく仕組み。
https://ppp.worldbank.org/public-private-partnership/applicable-all-sectors/about-public-private-partnerships
 
※5)EEP(Experts Exchange Program):石坂産業でインターンシップ・プログラムを通じて、知識、技術を学ぶ専門家交流プログラム。
 
※6)トリブバン大学(Tribhuvan University):1959年、ネパール最初の大学として設立された国立大学。5つの研究所と4つの学部で構成され、その下で主要な学問分野が40種、関連キャンパス62校と様々な分野の付属カレッジ1,062校が運営されている。現在約48万人もの学生が在籍するネパール最大の大学。
https://tu.edu.np/pages/about-us-2

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