■Special対談■成澤俊輔さんと石坂代表が多様な働き方について意見交換しました

心の不調や引きこもり、障がいを持つ方など、就労困難者と呼ばれる方々の「働き方支援」「人と企業を結ぶ活動」をされている成澤俊輔さんと石坂代表が多様な働き方について意見交換しました。

著書「大丈夫、働けます。」を発刊。就労困難者の就労支援・障がい者雇用のコンサルティングを通じて、多様な働き方の支援活動を実践されている成澤俊輔さんが、弊社を訪問されました。企業にとって、社会にとって、一人ひとりの強みを見つけるとはどういうことなのか、人の成長をどう後押ししていくのか、石坂代表とともに、これからの時代の「就労支援のあり方」「多様な職場の可能性」についてなど、貴重な意見交換をしていただきました。

▲ “世界一明るい視覚障がい者”として活躍される成澤俊輔さん(右)と石坂典子

石坂 成澤さんの活動の中心でもあるテーマ、年齢や性別、障がいの有無を超えて、個人としての強みを活かして継続的に働ける社会をつくるにはどのような視点を持てば良いか、実践的なアイディアを含めてお話ししていければと思います。

成澤さん(以降 敬称略) 石坂産業さんがされていることと、私達がやっていることは、同じ方向性ではないかと思っています。里山と就労困難な人たちとは、どこか一緒かなと思っているんです。その価値が世の中に認められていないとか、こんなものだろう、と思われている人たち、そこにチャンスとか、情報とか、きっかけとかを作って、「そんなもんじゃなかったんだね!」と思っていただきたい。
環境とかリサイクルのような仕事と我々の仕事って近いものがあると感じるのはそうした点にあります。使い物にならない、と世の中が決めつけたものに、見方や捉え方を変える提案をすることだと思っています。

石坂 今、社会と就労支援の困難な人たちの大きな隔たりや、うまく回らない、一番の原因というのは何かありますか?

成澤 アクションとか、行動できる人たちが減ってきているんじゃないかなと思います。
統計的に見ると、3~4人の家族、世帯の中に、一人は就労困難な人がいるといわれています。だから就労困難な人を見たことがない、接点がない、というのはおそらく違うと思っています。

障がいを持った人たちのブログや闘病記や24時間テレビを見たことがある、でも、隣に座った人に話しかけたことがあるかというと、関わった機会、アクションした機会がない、というのが大きな課題だと思います。
講演会をすると、毎回、駅で障がい者を見かけたらどうしたらいいでしょうか?と聞かれます。その時は、「大丈夫ですか?」ではなく「お手伝いしましょうか?」と聞きましょうね、という話をしています。人は「大丈夫ですか?」って聞かれたら、「大丈夫です」って言っちゃうから。「お手伝いしましょうか?」のほうが主体的ですしね。
声をかけてもらった側も気持ちよくコミュニケーションを取るように、「声をかけてくれてありがとう」とか、関わってくださった人といいコミュニケーションを取れるといいかなと思いますね。

石坂 確かに、よく「大丈夫か?」って聞いてしまいますね。「大丈夫か?」って聞いて、「大丈夫じゃない」って言いづらいですよね。

成澤 先日、大手の会社で講演してきたのですが、きちんとマネジメントできる人がそれなりの立場にいないと、働き方、会社が変わらない、という話です。
大丈夫ですか、とかお手伝いもそうですが、困っている人たちにいつも言っていることがあって、「何か僕にできることはある?」といつも聞くようにしていています。

「ワー」って萎えている人や、「もう死にたい」っていう人とか、数千件くらいの電話やメールもあり、「もう自分はダメだ」と思っている人はたくさんいます。そのときに「何か僕にできることはないですか?」と聞くと、「僕にできること」に思考が変わるんですよね。「この人に何かしてもらえることって無いだろうか」って。
彼らが僕を頼りやすいように、どういうふうに声がけをしてコミュニケーションをしていくかということを、いろいろな形で意識をしていますね。

石坂 なるほど。我々がどう接するかということの一つの中に、彼らだけの問題だけではなく、彼らの家族の考え方がすごく重要ですね。
何かあったときに、こういうリスクを持っているのだから、うちの子を守ってほしい、という主張が強い時があります。親御さんたちのメッセージってどういうふうに伝えているのですか?

成澤 わかりやすい例は、「いつになったら正社員にしてくれるんですか、正社員にしてください」これは無理難題だといつも思っているんです。子供を正社員にしたいというのは、実際はそういうことではなくて、安全・安心を担保しながら、少しずつ給料や仕事の範囲が増えるような、そんなふうに『生き方に伴走してくださいね』ということだと思います。伝える努力ではなく、伝わる努力をしなければならないので、正社員にしてください、という話はその1例だと思っています。

2つ目は、仕事をする上で必要な資質や能力があるとしたら、可愛がられることだと思っています。可愛がられるということができる人たちの多くは、可愛がられた経験がある。それが早いうちに、身近なところで。親が子供を愛することで、子供は可愛がられる人材になれる、と思っています。

1つ目は、会社の人事で、障がいを持つ人達との面談の場面になると、いつもこういうことを聞かれます。「苦手なことはなんですか、配慮してほしいことはなんですか、サポートしてほしいことはないですか」って。この問いかけは良くないと思っています。前向きではないし、例えば僕は目が見えないです。明らかに苦手なことは字を読むことです。それって何が苦手なんてすぐにわかるじゃないですか。
でもこの問いかけが、「強みはなんですか、どうやったらその強みを活かせる環境になりますか」というようことを、親や行政や会社がもっと口にしていたら、世の中は絶対変わっていたのではないかと思うのです。
強みは、書道が無茶苦茶うまいとかそういうことではなくて、言わなれなくても朝7時に毎日起きれるとか、お願いされなくてもポストの新聞を取りに行ってくれるとか、継続できていることがいいと思うので、親や支援者がもっと強みを語れるようになるといいと思っていますね。

石坂 例えば彼らの成長という点から見たときに、最初は毎日会社に行くことができれば最高だ、と思うじゃないですか。それが達成できたときに、次のステージで、この作業をもう少しやれるようにしてみようか、と次の課題を与えたときに、それを極端に受け止めてしまうということがあるんです。
「こんなに頑張っているのに、まだ頑張らせるんですか」って。期待してくれているという受け止め方ではなくて、できないことを指摘されたという受け止め方になってしまう。「次のステージ」が要求になってしまう。言った側の思いと、言われた本人の受け止め方が全然違っているというケースが結構ありますね。

成澤 就労困難な人は、人生の中で結果を求められたことが無いんです。障がいや病気があるのに、ひねくれないで学校に行っているだけで十分だ、みたいなところもあれば、どれくらい結果を求められるかわからない、というところがあって、結果を求められる、課題をクリアする、といった経験値がそもそも圧倒的に少ないと思います。

石坂 弊社のスタッフも、すごく気を遣ってくれているというのがわかるんです。言い方を気をつけているというか。たとえば、「分ける作業」という点について精度を高めることができてきたのですが、ここまで分ける作業ができたので、スピードを早くしてみよう、というとスピードが優先されて、精度が下がってしまったというのがあるんです。
どう伝えていいのか、我々もわかっていない。なんと言えば良かったのかな、と思っているところがあると思います。
伝え方のポイント、こういう言い方がいいとか、ワンクッション置くとか、何かアドバイスはありますか?

成澤 恐らく成功例はあまりないと思います。この場合、就労困難な人もそうでない人も変わらないと思います。大前提にあるのは、人は聞いたことをやるのではなく、見たことをやる、ということです。だからアドバイスする人に心を寄せるのではなく、実践者についていく、というのがある。実践者が、やって見せてあげているのか、というのが大事かなと思います。
誰しも二つのゴールがあったら目標が下がってしまう、ということもあると思うので、私はこんなふうにやってみたよ、でもいいのかなと。質が担保できて、今度は量。すると量に目がいくから、「質を大切に」というシールを眼の前に貼るとか、そんな対処も必要だと思います。やって見せて一緒に考える、というのが一番かと思いますね。

▲ 「強みを引き出す『問い』が大切なのでは。」成澤さんのメッセージには説得力があります

▲ 企業の意識やアクションを変えていくヒントがたくさん詰まった対談となりました

石坂 お話しをまとめていくと、だいぶ整理できますね。初めての関わり方では、声がけを「大丈夫?」ではなく「お手伝いしましょうか?」とすることが重要だったり、一緒に仕事をしてみるというところでは、会話だけでなく、実務的にやっている姿を見せながら伝えていく、という取り組み方などは大切なことですね。

成澤 先の未来を見せてあげる、ということも大事だと思っていて、それで給料が上がるとか、一緒に社員旅行に行ける、でもいいですし。人と一緒に何かを達成した、という経験が少ない人達なんです。自分のことで手一杯で。だから彼らと接して、人生で初めて目標ができました、と言った人もいる。家に引きこもっているときは目標なんてないんです。目標というのは喜ばせたい人がいるから目標がある。障がいや引きこもっている人達は、まだその前の段階なのですね。何かができたその先に、人が介在するようなことがあれば、新しい経験ができたなって思えると思います。

石坂 言葉でわからなくても、一見理解しそうなことであっても具体的にその先に見える何かを示してあげることによって、やる気につながるという意味合いですね。

成澤 毎日、量と質を担保できたかをわかるようにするためには、量を担保できたときは青いシール、質は赤、ラジオ体操の参加シールのように貼っていくとか。「最近青ばっかじゃね?」となったらわかり合えるでしょうし。わかりやすくしてあげることが大事なのではないかと思いますね。

石坂 次のステップに進むために、伝えているだけでは見えないというのは過去にそういった経験がないから。具体的にシールを集めよう、というような可視化することによって、モチベーションが上がるのかもしれませんね。たくさん青シールがもらえたら、ボーナスがもらえるかも!…というわかりやすさですね。

成澤 彼らの性質上、可視化するのがいいかもしれませんね。

石坂 現在、お付き合いしている会社は、こうした問題に比較的前向きに関わっていきたいと思う企業で、増えてきていると思います。逆に、まだ全く関わりを持てない企業もあります。

成澤さんが、様々な人を支援する中で、企業側に依頼したいこと、期待したいこと、などはありますか?例えば法的に何人入れなければダメという話ではなく、企業側としてどうあるべきなのか、企業に何を望んでいるのか、という点でどうでしょうか?

成澤 毎日のようにそんな話になるんです。今だと、20人から200人くらいの会社さんとお付き合いすることが多いです。コンプライアンス的にやっているところは、基本お付き合いしません。社会貢献のためだけにやっているところともお付き合いしません。会社とか組織で働くことの醍醐味を一緒につくることができたらいいな、と思っています。

障がいを持つ人を雇うということは入り口の戦略ではなく、彼らが働きやすいということは、実は他の社員にとってもいいことである、と考える会社が社員の実力を発揮できる会社なのだと思います。そういう会社が顧客にも応援される。それは循環だと思っています。働くこと、会社は窮屈で楽しくない、我慢する場所…ではなくて、会社で働くのは楽しくて、いろんな人を変えていけるのは楽しいよね、とか、その醍醐味を一緒に作っていける、ということが、お客様となる企業とお付き合いするときに大事なことだ、と思っています。

原則1業界1社しか受けないと決めています。IT会社やゲーム会社、外資系の新聞社、飲食や介護施設、だんご屋さんまで。実現できる会社が発信をしてくれて、いい発信をしてくれたら、早く業界が変わる。それによって早く救える命があると思うんです。

石坂 そのような方針で活動される中、人材を自分たちの「輪」として捉えている企業の共通点はありますか?変わっていくという点で、どのようなことが見えてきますか?

成澤 やはり「気づく力」、「気配りする力」というのがあると思います。彼らの与える影響が大きいと思ったときに、多くの人たちは自分は一生懸命仕事しているかな、自分はこんなものかな、って気づくことが増えるのは間違いないと思います。もう一つは、おせっかいができるようになります。この人にこれで伝わるかな、伝わらないからこうやってみようかな、とか。やったほうがいいなと思っていたこと、おせっかい、余計なことだと思っていたことをやってみよう、という気持ちになっていく。最終的には社員とのコミュニケーションが変わっていく。おせっかいとか気配りをするとか、アクションする力に変化していくと思います。

石坂 例えば企業側が、「こういう価値が変わった」ということに気づくことも大事だし、さらには、気づいたことを発信していく活動をしていかないと業界の中にその価値が増えていかない。
一事業者の気づきではなくて、共通した気づきが得られるということを広めていくことで、「純粋に自分たちも気づかせて欲しいから、こうした人材に来て欲しい」と、彼らに言えるような世の中にならないといけないと感じますね。

成澤 去年も50社見ていますけど、売上が下がったところは一社もない。どこも成長して、人の可能性を信じている、というところが多いと思います。
彼らの方が強みとか弱みがよく分かっている。たとえば、アメリカで秘書をしているダウン症の方がいます。字を読むのが苦手、コミュニケーションが苦手、でも、書類にシュレッダーをかける仕事をやっている。年収600~800万円の方です。普通の人がシュレッダーやっていると、うっかり企業秘密を見てしまう、そしてうっかり情報をしゃべってしまう。そのリスクを回避する策と考えれば、ダウン症の人が「読めない、話せない」というのは弱みではなく強みに切り替えることができる。強みと弱みってなんだろうって考える世の中になっていく。
私共の人材は強みや弱みがしゃべれるようになるので、強みを活かしながら仕事ができているかな、って思えるようになっていて、成長につながるなと思っています。

石坂 素晴らしい話、個性の活かし方ですね。企業側に見せるとしたら「無駄な仕事の3割の減らし方」という見出しにすると、みんな見るなと思います。
企業側はあらゆることにおいて、自分たちのベネフィットを考えないと選択できないのがビジネスだから、ビジネスを見出してあげることによって、気づく機会を与えてあげる。それは重要なことだと思いますね。やってみようという気にさせないと行動に移せない。
先ほどの個人が声をかけるという行動の怖さと同じくらい、採用が怖いわけです。大変なのではないか、負荷がかかるのではないか、リスクが多いのではないか、そう思うことが多いから、そう思わせないようなことを発信していく。そうしていかないと、多くの企業は聞く耳を持たないですから。

成澤 本人たちが意識していなくても、それを強みだ、と教えてあげられる機会が、学校でも家庭でもいいと思いますが、それがあると、変わっていくと思いますね。生かされる環境を作る。

京都だと「伝福連携」っていう言葉があるんです。京都市の多様な働き方アドバイザーとして行ったのですが、伝統文化って、売上が上がらない、担い手がいない、イノベーションが起きない、西陣織200年みたいな現場ですよ。
僕らの中に、朝礼が苦手、会議が苦手、マニュアルが苦手だという人がいます。しかし、西陣織の現場にはそんなものない。発達障害の人たちは、見て黙って覚えろよというのが得意な人たち。つまりは上品に言うと職人気質だということ。
数百年続くろうそく屋があるのですが、好きなときにろうそくの絵付けだけをやってもらっている。伝統文化のところに発達障害の人を持ってくる、目で覚えて納得のいくまでやるという仕事の内容がピタッと合って、面白いな、って。こうした状況は、これ以外にもいろいろあると思います。
採用にも効いてくるし、ブランディングにもなる。コストも下がるし、生産性も高められるし、会社のエンゲージメントにもかかわっていく。採用の分母がふえていく、4つにも5つにも伸びていくかなと思います。

石坂 自分たちの企業が、こうした問題に何ができるのかを考えると、どうしても「心の問題」、「倫理面的に採用する」と捉える企業が多かったと思います。論語と算盤という見方でいえば、論語から採用してきた企業側とって、「算盤」としての問題を、きちんと考えてあげることで、十分、算盤が合う存在になっているということが必要になってきていますね。経営者に向けて、就労支援は算盤からも考えられるということを発信して、それを感じてくれる企業が増えていくといいですね。
このたびは、貴重な情報やご意見をいただき誠にありがとうございました。

◇成澤俊輔(なりさわしゅんすけ)/プロフィール

1985年佐賀県生まれ。NPO法人Future Dream Achievement(FDA)理事長。2003年、埼玉県立大学保健医療福祉学部入学。2010年、2年間の引きこもり生活を経て、7年かけて同大学を卒業。在学中よりインターンとして働いていた株式会社ジェイブレインに新卒社員として入社。しかし過労でうつとなり、4ヵ月で退職。その後、経営コンサルタントとして起業、独立する。2011年、NPO法人FDAの事務局長に就任。2016年、理事長に就任。自らにつけたキャッチコピーは“世界一明るい視覚障がい者”。障がい者雇用や、多様な働き方改革を専門に、全国で講演やコンサルティングをおこなっている。2016年、月刊DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビューの「未来をつくるU-40経営者」に選出される。2017年、第31回人間力大賞経済産業大臣奨励賞・全国知事会会長奨励賞受賞。